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2017.01.17ー02.04 Yoshihisa Kitatsuji 2017

2017年最初の展覧会は北辻良央の新作でした。1980年のエッチング「A rice plant」を元に制作された新作、と写真や言葉が刻まれたエッチングが一対となった5点組作品を発表。会場には作品と共にテキスト(「A rice plant 覚書」)を展示しました。それらが組み合わさり、時間を超えた一つの物語のように綴られています。

 

廊から

展覧会「YOSHIHISA KITATSUJI 2017」に寄せて − 記憶と時間

 

過去の時間はどこにあるのでしょうか。時間は常に失われ、目の前を去って行きます。消えるものを形にはできません。それでも確かにありありと心にあるのはどうしてでしょうか。1980年という年代の節目に作者は「A Rice Plant」というひとつの版画を制作しました。大阪の羽曳野の地で育てられた稲穂は、銅版に絵として刻まれ、転写され紙の上に消えないイメージとして再び出現しました。写された稲穂は現実の再現ではないのです。そこには作者の記憶があるからです。十数年前、2000年にさしかかろうとする頃、関わった展覧会の記憶があります。展覧会は再現できません。出会いと同じで、その時にその場でみたこと、見る主体のその時のあり方も関わるからです。それでもなお引き寄せられる無形の記憶というものが、幻想と思えないのはどうしてでしょうか。今回の展示は記憶を手繰り寄せて辿る小さな旅のようです。ぜひご同行いただければと思います。新たな年にお会いしましょう。

 

 

2016年12月 +Y Gallery